［em］ ページ30
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『好きな人に、嫌われてしまう夢を見たんです』
久しぶりに会いに来てくれた貴方からそんな言葉を聞かされるだなんて。
深刻そうな顔でやってきたAさんに紅茶を淹れて、お菓子を用意していたら背後から聞こえたか細い声。
『「嫌い」って面と向かって言われてしまったんです』
俯く彼女の声色は決して明るいものではなくて、真剣に悩んでいる事が伝わってくる。
可哀想にとか、所詮は夢だとか、今言うべき言葉はわかっているんです。
けれどその前に好きな人がいた事の方が私にとってはよっぽどショックで。……今日夢に見そう。
『正夢になったらどうしましょう』
潤んだ目線にくらくらしつつ、必死に脳を働かせて「逆夢というものがありまして」とどこかの本で見た知識を搾り出した。
「逆夢は正夢の反対語で、夢とは反対の事が起こる夢なんです。恋愛に関する夢は逆夢の事が多い……とどこかで読みました。何の本やったかな」
『え、じゃあ好きな人とデートする夢は、逆にデートできないっていう予知なんですか？めっちゃ喜んじゃったな』
「……見たんですか、デートする夢」
顔を上げたAさんは、うっとりした表情で語り出した。夢の中の一つ一つを思い出して幸せに浸っているらしく、頬も華やかに染まっている。
『あれはかなり前なんですけど、夢の中で美術館に誘ってくださったんです。張り切っておしゃれしたら褒めてくれて。不慣れだって言ってたのに美術館に着いたらいろいろ絵の小話を聞かせてくれて』
意気揚々と想い人について語るAさん。必死に笑顔を取り繕って相槌を打った。
私だってそのくらいなら……なんてつい名前も知らない相手に妬いてしまう。肝心の誘う勇気がないくせして。
『でもそんな夢が見れてしまったって事は、現実では起こらないって事なんですよね？』
「所詮は迷信だと思いますけど、それに従うとそうなりますね」
『だったら見ない方が良かったな……あ、でも昨日は「嫌い」って言われましたから、逆夢なら脈ありって事ですよね！』
私の脈はたった今なくなりましたけどね！
渾身のツッコミは笑顔で覆い隠した。今夜はたぶんAさんに振られる悪夢を見る羽目になる。
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元青磁(プロフ) - 森。さん» ﾜ°……！？あばばばばありがとうございます(；▽；) (4月18日 20時) (
レス) id: d3f69151ea (このIDを非表示/違反報告)
森。(プロフ) - この甘すぎずさっぱりしすぎずの距離感好きです！！！ (4月18日 17時) (レス) @page20 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：元青磁 | 作成日時：2024年4月9日 4時
