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「おいA、羽根ペン忘れてるぞ」
「……腹減ったからパス」
「これ、なんか菓子貰ったんだが、俺の好みじゃないし、やる」
「正気か？悪いことは言わない、やめとけ」
『………なんで好きになったんだろ』
「えっ、えぇ〜……？」
彼によく言われる台詞群トップ4を思い浮かべてみた私は、無意識にそう呟いた。思い返してみれば酷い台詞ばかりだ。恋愛小説の無愛想キャラでももっとマシな台詞をかけてくれるだろう。
呆れかえった友人に苦笑いを返す。
その時、ぶくぶくぶく、と鍋から嫌な音がした。
「ちょ、ちょっとA！鍋、鍋！」
『うっ、うわぁぁぁ！？火、火をちょ、調整しないと！！』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
結論から言えば、惚れ薬は出来た。
やはり血は嘘をつかないのか。お祖母様の存在は偉大だ。今度家に行く時におばあちゃんの好きなクランベリータルトを持っていこう。
そして肝心のチョコ作りに関しては、友人に手伝ってもらいながら2つ鍋を破壊し、「薬作りは得意なのに」と冷たい視線を浴びながらなんとか完成した。勿論抜群の出来である惚れ薬も混ぜて。
正直準備は完璧だ。……渡せれば、だけど。
「………ほら、行きなよA」
『ちょ、ちょっと、お腹が……』
「
『ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ』
オークが軽々と通れてしまいそうなほど大きな、大講堂の出入口の傍ですったもんだする私と友人。中ではご友人と話す、目標、スマイルの姿。
正直さっさと行きたい。でも、でも………改めて考えても恥ずかしいじゃん！
「何事も当たって砕けなさいって。一旦自分の薬の力を信じな。」
玉砕したら一緒にベリージュースで乾杯よ、と縁起でもないことを言う友人。でも、その玉砕が怖くてわざわざ惚れ薬なんて作ったんだ。やるだけやろう…うん。
私は一度深呼吸して大講堂の石造りの床を踏む。カツンコツン、という足音が、普段は気にもしないくせに今日はやけに耳に残るような気がした。
…あと、1歩。
『す、スマイル！』
「…？あぁ、Aか。」
思いきって名前を呼ぶ。緊張のせいで声は裏返るしスマイルのご友人の視線も痛いし講堂の中に若干響いたのもメンタルにくる。でも、ここまで来たなら引けない。女は度胸…！
スマイルはいつものように無表情で振り返り、紫紺の瞳が私を捕える。怖いくらいに真っ直ぐに。
私はまた一度深呼吸した。
『ｯ、これ、あげる！』
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作者名：梅餅 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/12Saku111/
作成日時：2023年11月30日 16時
