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祖父はそう言うと、鯉を口の中に放り込んだ。その時、わたくしは初めて祖父を怖いと思った。
その愛しい鯉の話をしている時、祖父の顔が恋する乙女のように蕩けるのを見た。愛しい鯉の味の話をした時、その蕩けた表情のまま、瞳だけがどろりと汚泥のように濁ったのを見た。
祖父__というか、親しい相手のことを悍ましいなどと思ったのは、その時が最初で最後だった。
鯉の頭は、やっぱり悲鳴を上げていた。
そんなことを思い出したのは、今、そんな祖父の葬式をしているからだ。祖父は、いつも良いものを食べていたからか、特に病気もせず大往生だった。まさにピンピンコロリといった感じ。
式はつつがなく進み、葬式後の宴会の最中。わたくしの目の前に並べられた料理の中に、鯉の丸揚げがあった。きっと祖父の好物だからだろう。相変わらず不気味なその姿に怯えたが、思い切って口に運ぶ。
……うまっ。
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鯉の味は恋の味、なんて。
ちなみに作者は鯉の丸揚げ、食べたことないです。
作者の祖父が実際に好きでよく食べていたらしいですが、流石にこんなパンチの効いた理由では無いと思います。多分。
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あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすな@さくらぁさん» またまたコメントありがとうです。兄がぽんこつならもちろん弟だってぽんこつです。間に合ったルートは(弟的には)ハピエンです。間に合わなかったルートも(どっちも壊れちゃったから)ハピエンです。 (4月23日 14時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな@さくらぁ(プロフ) - またしてもコメ失礼します🙇♂️弟視点に命が助かりすぎました。まさかの救済ルートか!?と思ったら案の定そんなものはなく…やっぱり可哀想な男はどう足掻いても可哀想な結末しかないんだというのを再認識できてとても良かったです。 (4月23日 7時) (レス) @page25 id: 6eb52e408b (このIDを非表示/違反報告)
あいすくりぃむとちょこれぃと(プロフ) - すにすなさん» コメント感謝です〜こいつは実は弟より全然頭良いです。頭が良いせいで頑張っても無駄と気づいてしまいました。それでも他にやりようはあったのに、『逃げ出す』という一番の悪手を選んでしまうぽんこつです。作者もお気に入りなのでもしかしたら続くかもしれない。 (4月8日 23時) (レス) id: b2ed5b6349 (このIDを非表示/違反報告)
すにすな(プロフ) - お話の世界観や最後の後味の悪さに引き込まれ、一気に読んでしまいました。特に2作目のおにいちゃんのお話が大好きです。一生懸命頑張ったけど報われず、最期の瞬間は惨めであっけない男が好きなので、ゼストおにいちゃん最高でした。密かに更新楽しみにしています。 (4月8日 22時) (レス) @page21 id: b675f659fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あいすくりぃむとちょこれぃと | 作成日時:2024年4月6日 3時