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「なぜ自分の気持ちに嘘をつくんだ？ 君が抱いている恋慕には少なからず肉欲が伴うものだろう」
「……私は、トントンさんの側にさえ居られればそれでいいんです」
「殊勝なことを言うんやな。もっとないのか？ トントンを手籠にしたいとか、独占したいとか、縛りつけたいとか」
「そんな身勝手なこと、できません」
「勝手？ そもそも人は生きている間は他人の勝手に振り回されているものだろう。もちろん他人を振り回すことだってあるだろうがな。恋愛なんかその最たる例だ。勝手の押し付け合いじゃないか」
「でも、今の関係性だと私の勝手を押し付けるだけになりませんか？」
「いいじゃないか。それで。今のうちに好き勝手しておかないと惨事になるぞ」
「その、話を大きくするのやめてもらえませんか。私はただ、もっとささやかなことを願ってるんですよ。少しでもいいからこちらを見てくれたら、って。私の身の丈にはこれくらいが丁度いいんです。部外者は、口を挟まないでください」
「そうか。……聞こえたか？」
グルッペンさんが私の背後に向かって呼びかけた。反射的に振り返って、すぐにそのことを後悔する。トントンさんが険しい面持ちで背後に立っていた。しかし、私とトントンさんの視線が交わることはない。トントンさんはグルッペンさんの胸ぐらを掴んで引きずるように地下へと向かっていった。
しばらくした後、トントンさんが一人で戻ってきた。私は二人が地下にいる間に逃げ出さなかったことを強く悔いた。
「生ハム、食べるか？」
重たい沈黙の中、トントンさんが柄にもなく優しい口調で言った。断るのも気が重くて、黙って生ハムに手を伸ばす。ぬるくなった生ハムは、油が溶け出して手が汚れた。生肉特有の臭みは、塩辛さで中和されていたが、口の中の温度で生ハムがくったりと柔らかくなる。なかなか噛みきれなくて、結局ほとんど丸呑みをした。
トントンさんは、何も言わなかった。ただ、何かを思案しているようで、私の言葉にも上の空だ。私はすぐにトントンさんに話しかけるのをやめて、一心不乱に生ハムを食べ続けた。
遠くからドタドタとした足音が聞こえる。
「ごめーん！ 遅刻したわ」
いつもなら騒々しく感じるはずなのに、今は天使のラッパにすら思えた。チーノは私たちの微妙な空気に気づいたのか、そっと踵を返したが、あえなくトントンさんに捕まってしまう。トントンさんはチーノに何か耳打ちをして、そのまま去っていった。
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田中(プロフ) - 前々から気になっており、やっと今日読みました。素敵すぎました (10月19日 4時) (
レス) @page32 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - miiさん» コメントありがとうございます！拙作へのお褒めの言葉、とても嬉しいです。名残惜しいと言って頂けて、書いた甲斐があったと思えました。本当にありがとうござました。 (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - 桜華さん» コメントありがとうございます。こうして無事に完結できたのは評価やお気に入りをしてくださった皆さんのおかげです。楽しんで貰えたならそれ以上に喜ばしいことはありません。本当にありがとうございました！ (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - コメント失礼します。完結おめでとうございます！関連作ランキングから見始めたのですが、タイトルから滲み出る不穏さと、リアルでありながら綺麗に可愛らしく描かれた心情が、とても好きでした。名残惜しいですが、素敵なお話をありがとうございました。 (6月12日 3時) (レス) @page31 id: 2d3cfb07c5 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - コメント失礼いたします！完結おめでとうございます。かわいいお名前に惹かれて読みに来たら、まさかのお肉屋さんでびっくりです！！しかし、多彩な文書によって最後までとても楽しく閲覧させていただきました。素敵な物語をありがとうございます！！ (6月11日 23時) (レス) @page31 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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