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ダン！
突然真横から大きな音がして、びくりと体を震わせる。恐るおそる音の方向、つまりはトントンさんを見ると、巨大な中華包丁を真顔で振り下ろしていた。
ダン！
ものが浮くほど勢いよく、まな板に叩きつけるみたいに肉を切るトントンさんに怯えていると、コネシマさんが嬉しそうにニヤニヤしながらトントンさんに声をかけた。
「なんや、ヤキモチか？」
「……は？」
トントンさんが鬱陶しそうにコネシマさんを睨む。その鋭さは手に持った中華包丁の刃先に負けず劣らずだ。
「別にお前のバイトやねんからとったりするわけないやろ」
それなのにコネシマさんは、笑いながら火に油を注ぐような真似をした。トントンさんの眉間の皺がいよいよ渓谷のようになってくる。
「気にすんなや！」
コネシマさんがそう言った途端、トントンさんが包丁を持ったままコネシマさんに向き直る。
刺される。
咄嗟にそう思った。コネシマさんの首に中華包丁の刃がめり込むのを想像してしまい、心臓を冷たい手で撫でられたような感覚になった。このバイトをしている中で、死体を目にすることは何度もあった。だけど、目の前で実際に人が殺されるのはまだ見たことがない。できれば、これからも目撃することのなく生きていきたい。
その願いが届いたのか、トントンさんはコネシマさんを刺すことなく、ふはっと吹き出して笑い出した。コネシマさんもつられたように、肩を震わす。二人の笑い声が混ざり合って、厨房を満たす。私はその奇妙な光景に当惑しながら、追従笑いをしてみる。段々と二人の笑いが落ち着いて、最後にトントンさんが脱力したようにため息をついた。
「からかい過ぎたか？」
「マジでしょうもないことすんなや」
トントンさんはコネシマさんの肩を小突いて、肉を切る作業に戻った。コネシマさんはまだ笑いの余韻を残したまま、私の隣で立ち止まる。
「今日、何時までバイトなんや」
「えっと、暗くなる前には帰ります」
「そうか。なぁ、車で送るからラーメン食べに行かんか」
お前と俺と、トントンの三人で。
いやだ、とすぐに返事をしそうになって慌てて口を噤む。あまり嫌がっているのを表に出して、トントンさんを怒らせたくない。どうにか穏便に断りたいものである。
「お二人の食事の邪魔しちゃいますし……」
「そんなことないよ！ 別にトントンも気にせぇへんから。な？」
「お前断っても無理矢理連れてくやろ」
「ほな決まりやな」
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田中(プロフ) - 前々から気になっており、やっと今日読みました。素敵すぎました (10月19日 4時) (
レス) @page32 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - miiさん» コメントありがとうございます！拙作へのお褒めの言葉、とても嬉しいです。名残惜しいと言って頂けて、書いた甲斐があったと思えました。本当にありがとうござました。 (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - 桜華さん» コメントありがとうございます。こうして無事に完結できたのは評価やお気に入りをしてくださった皆さんのおかげです。楽しんで貰えたならそれ以上に喜ばしいことはありません。本当にありがとうございました！ (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - コメント失礼します。完結おめでとうございます！関連作ランキングから見始めたのですが、タイトルから滲み出る不穏さと、リアルでありながら綺麗に可愛らしく描かれた心情が、とても好きでした。名残惜しいですが、素敵なお話をありがとうございました。 (6月12日 3時) (レス) @page31 id: 2d3cfb07c5 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - コメント失礼いたします！完結おめでとうございます。かわいいお名前に惹かれて読みに来たら、まさかのお肉屋さんでびっくりです！！しかし、多彩な文書によって最後までとても楽しく閲覧させていただきました。素敵な物語をありがとうございます！！ (6月11日 23時) (レス) @page31 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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