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「ポーション買いたいんだけど、見ていいかい?」



カイラが帰ってからしばらくして、初めて見る客が来た。

体格は普通。魔力量はほとんどなし。年齢は35くらいか。

あまり強そうではない。

強くないということはつまり実績がない。実績がないということはお金が無いということだ。

私は男を一瞥すると、読んでいた本に視線を戻し



「見ちゃダメって言う売り手がいるのかな」



と無愛想に応えた。

男は「なっ……」と面食らっていたが、陳列されたポーションに目を通し始めた。

私のポーションにはタグも説明の文章も付いておらず、ポーションを見るだけではどんな効果があるのかわからない。

それに気がついた男は



「体力を一時的に増幅するやつはあるか?」



と聞いてきた。

体力増幅ポーションと呼ばれるそれは、ポーションの中では基本の品で、どんなポーション屋にも置いてある。



「もちろんあるよ。だけど、他のところで買った方がいい」



相変わらず本に目を落としたまま言うと、男は口角を上げ、挑発的な顔をした。



「商売人が自分の商品を勧めないとは驚くね。理由を聞かせてもらおうか」

「私のポーションは特別だからだよ。他のところより高くつく」

「ほー。値段は?」

「体力増幅ポーションなら、1本5万だね」



一般的な体力増幅ポーションの値段はせいぜい5000から1万だ。

その5倍以上の値段が想定外だったのか、男はギョッと目を丸くしたが、すぐに落ち着き払った顔に戻り口を開いた。



「お前さんのポーションが特別だという根拠は?」

「飲めば分かる」

「だけど、詐欺かもしれないのに買ってみるリスク好きはそういないんじゃないか?」

「…………詐欺だと思うなら買わなければいい。帰ってくれて構わないよ」



駆け引きに応じるつもりはない。

私のポーションは中位以上の冒険者の間では有名だし、不愉快なことを言う貧乏冒険者を無理に新規顧客にする必要などどこにもない。

バッサリと切り捨てた私の態度に驚いたのか、男は慌てたように両手を机に叩きつけた。



「っ……詐欺って言ったのは悪かったよ! それじゃあ……」

「今日はルナがいる日か! 市場に来てよかった!」



男とのやり取りが面倒になってきた頃、常連の冒険者が来て、私と男の会話に割って入った。

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設定タグ:異世界 , 魔法使い , 冒険   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:星月未来 | 作者ホームページ:https://mypage.syosetu.com/2614418/  
作成日時:2024年4月18日 19時

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