【WT】ホットミルクをまぜないで【短編集】 (ページ5)

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──………やっちゃった、絶対に間違えた。

『いくら混乱してたとは言え、勝手にお店飛び出すは無い、よねぇ……』

あの後、勢いのままカフェを出てそのまま真っ直ぐ家に帰った。あんまり急いでいたのかはたまた息すら忘れていたのか、家に着いた頃には呼吸が荒くて息も切れていた。
そんなに、急いだつもりは無かったんだけど。余程余裕が無かったらしく家に着いて一息ついた時には、カフェで飲んだミルクティの味も、もうすっかり記憶から消え去っていた。

そのまま、もう考えることも何かすることも面倒になってしまって、ベッドに身を投げ出した所までは覚えている。次に意識がはっきりとしてきた時にはもう外は真っ暗で、そこでようやく着の身着のまま眠ってしまったのだと気がついた。

『はあ〜〜〜………』

まだ覚醒しきっていない頭で、昼のことを思い返す。まともな説明もないまま私がカフェを勝手に飛び出して、なかむにあんな表情させて。どう取り繕ってみても、私が冷静でなかったことなんて火を見るより明らかだった。なんで、あんなことしちゃったんだろう。今更になって後悔が募っていく。………なかむ、呆れちゃったかな、なんて。

『……いや、そんな心配をするのは……我儘か。』

スマホ、スマホ……と恐らくそこら辺にあるであろうスマホを手探りで手に取って、画面をつける。思った通りもう夜も遅くて、それを自覚すると何だかお腹が空いてきた。こんな時でも変わらず食欲はあるのだから、私は薄情な人間だったのかもしれない。
………とりあえず、何か食べよう。LEDの明るさに目を細めながらのろのろとベッドから出て、私はキッチンに向かった。

『今日はもう、簡単なものでいっか。』

冷蔵庫にあったもので軽く食事を済ます。別段用事も無かったから、そのままお風呂に入って、身支度をしてまた布団に入った。
訳もなくスマホを眺めるけど、流れてくるのはあんまり興味の無いSNSの通知だったり、何かのPRのメールだったりで、彼からの連絡は無い。

『潮時、なのかな…………』

ぼんやりとそんなことを考えしまって、黒い感情が胸に広がっていく。……あぁもう、なんにも考えたくない、な。スマホの電源を落として、思考をシャットアウトするように目を瞑った。意識が暗転する。

───だから、まさか思うわけもなかった。

「A、ちゃんと伝えに来たよ。」

『…な、え……？』

次の日、彼が家を訪ねてくるなんて。