【WT】ホットミルクをまぜないで【短編集】 (ページ10)

今日:6 hit、昨日:21 hit、合計:12,621 hit

コーヒーフレッシュ＿Br ページ10

-·-·-·-·-·-·-·-·-·-·-

まあ所謂、“嫉妬深い人間”というやつなんだろう。私は物に対しても人に対しても、人一倍執着心が強い。多分、だからこそだった。だから、だから私には、分からない。

────「恋情」と「友情」との、その境界線が。

『……なんて、我儘だよねぇ。』

ぽつり、何となく胸に浮かんだ言葉が不意に音を成して口を出てしまった。部屋に私1人しか居ないからだろうか、そんなに声量は無かった割に声がやけに響いた気がする。行き場の無いこの心のもやもやが、何だか少し決まりが悪くて。私は理由も無く、抱えた膝に顔を埋めた。

最近、こんなことばっかり気に病んでいる。まあその理由は明白で、明白だからこそ困っているのだけど。

『…………ぶるーく。』

そう、その原因というのが彼だ。数ヶ月前からお付き合いをしている。交際を申し込んできたのは彼の方からで、それまでは結構仲の良い友達だった。とは言え友達としての期間が長かったからか、“恋人”の関係になってからも付き合いに特にこれといった変化は無かった。まあ元々よく喋る仲だったし、連絡もほぼ毎日取り合っていたし。変化できる点が特段なかったと言ってもいいのかもしれない。

最初の1､2ヶ月は、それまでとは少しだけ変わってしまった距離感に何処となく慣れることが出来なくて、心做しか落ち着いていられなかったように思う。だが、ちょっとずつ自分の中で整理がついてきた頃、その面倒さを発揮しだしたのが「執着」というやつだった。

───ふと、確信を失ってしまったのだ。ぶるーくに向けるこの感情が一体何なのか、自分の中ではっきりと見えなくなってしまった。

怖い。もしこの感情が、恋慕じゃ無かったとしたら。ただの友情の延長線なのだとしたら。その区別も付かないままに、曖昧なまま選択をしてしまっていたのだとしたら。

『…………いや……今日はもうこれ以上考えたくないな。』

────だって、考えれば考えるほどに、彼を真っ直ぐに想えない自分が嫌になってくるから。

脱力しきった体でベッドにダイブする。それと同時に脳はすっかり思考を手放してしまったのか、段々と意識が微睡んで来て気づけば視界は暗転していた。